牛が怖かった
今日は、牛が怖かった。
牛の獣医師をやって飯を食っております。
牛は温厚な大型動物ではありますが、環境が変わることで「死ぬかも」と思うほど臆病な動物だとも言われています。
牧場に診療に行き、畜主の側では大人しくしていても、いざトラックに乗せて手術室に運ぶ(弊社には大動物用の手術台が完備されておりますので病畜は手術が必要な場合運搬されてくるのです)と、いわゆるキチガイ状態になってしまう牛もたまにいます。
家から一歩も出たことがない牛が、知らない人に、知らない車に乗せられて、知らない場所に連れて行かれて、知らない人たちに押さえつけられてお腹を切られる。
無理もない。
大概の牛は大人しく切らせて大人しく帰ってくんだけど。
攻撃モードにスイッチが入ってしまうと、もう人間は無力です。
アドレナリン全開で事務所を打ち破り、薬室をめちゃめちゃにした後、外に脱走して暴れ回り、地元の猟友会まで出動させて処分した個体も過去いたらしい。
今日の牛は、ロープで繋がれたまま、後輩のお腹にロープを巻きつけるように暴れたのでその様子を見ただけで貧血起こしそうになった。
ありがたいことに怪我人はいませんでした。
今日の牛の手術は、中止になりました。死にたくないし。
仕事に慣れて、牛への恐怖感が薄れる頃にローテーションのようにこういうハプニングが起きる。
あの大きさの生き物が人間の言うことを聞いていること。
今日も元気に美味しいお刺身を食べられたこと。
生きてることは奇跡だと思った。
慎重に生きよう。